
“おもいつき”で始まった二人の紙芝居
小島聖さん・平松麻さんインタビュー【後編】
“おもいつき”で始まった二人の紙芝居/小島聖さん・平松麻さんインタビュー【後編】
10月に「+CEL HOME STORE」で開催した、小島聖さんと平松麻さんの2人の思いつきから始まった声と色の実験室「おもいつきの声と色」による紙芝居のワークショップと鑑賞会。前編に引き続き、お二人のインタビューをお届けします。ワークショップでは子どもたちの自由な感性を引き出すために心がけていることや活動のこれからなどについて聞きました。
photo: Norio Kidera text: Hitomi Takano edit: Naoko Yoshida
「おもいつきの声と色」
俳優の小島聖さんと画家の平松麻さん、2人の思いつきから始まった声と色の実験室。2人の交流の中で生まれるアイデアや、それぞれの日常で感じた感情やできごとを物語にして、「紙芝居」という形で不定期に発表。オリジナル紙芝居の制作から朗読までを2人で行います。同時に、紙芝居を作るワークショップも主宰。物語を聴いて、それぞれに想像して絵を描き、最後はひとつにしてその日限りの紙芝居を完成させます。ワークショップや観賞会は、各地で不定期に開催中。

―― ワークショップでは、子どもたちが描いた絵を聖さんが物語に合わせて並べていましたが、どうやって構成を考えているのですか?
小島聖(以下、小島) 私の一存で、もう感覚でしかないです(笑)。でも回を重ねてきた頃年齢が上の子に「私はここの部分の絵を描いたから、ここにしてね」って言われたことがあって。小さい子だとおもいつきでわーっと描く子も多いけれど、みんなそれぞれきっと思いがあって描いてかもしれないから聞いてみようって。今日も小学校5年生の子にはどこの場面をイメージして描いて、どこに入れたいと思っているか、もしあったら教えてって聞きました。
これも私じゃなくて、麻ちゃんやほかの方がやったら、また違う感じになるだろうし。いろいろな可能性がありますよね。本当に一期一会です。この瞬間だけの。

―― 真っ白い画用紙に描くことはよくあると思うんですけど、ワークショップではまずは色がついたものの方が、躊躇なく描けてやりやすいかなと思って。あとはみんな一緒じゃなくて、“みんな違う色”でスタートする方が人と比べないかなと思います。自分の方が余白が多いとか心配になる子がいたら嫌だなって。色画用紙なら、選んだ時点で自分はこの色が好きなんだって自分の意思がひとつ表れている気がします。
小島 意外と取り合いになることもないよね。


―― 確かに、スタートが違う方が自由に自分の絵が描けそうですね。子どもとのワークショップで意識していることはありますか?
平松麻(以下、平松) 子どもたちと対等でいることを意識しています。ひとりひとりが抱えているイメージが絵として現れてくるから、それをとにかく大事にしたい。その人自身だから。例えば太陽を青く描く子がいたとして、「なんで青い太陽なの?」って聞いたら、どこかで悲しむこがいるかもしれない。決めつけないことは意識しているかもしれません。絵に現れること全てを尊重したいですね。
もし描くのを困っている子がいたらちょっと声をかけてみることはあります。実は描きたいイメージがあって迷ってることもあるから。今日も5年生の女の子に声をかけるか迷ったんですけど、彼女は雲を描こうとしていたので、「雲にも影ってあるよね」と一緒に描いてみたら、一気に彼女の絵の世界が自分のイメージに近づいたみたいでした。教えるではなく、一緒に考えるを大事にしたいですね。

―― 迷っている表情から、満足してやり切った明るい表情になったのが印象的でした。麻さんは紙芝居の絵を描くときはどんな風に?迷うこともありますか?
平松 物語ができてから、絵は私が枚数や区切る箇所なども決めちゃっています。物語を考えている時は、あまり絵を思い浮かべないで、聖さんと一緒に物語を考えることに集中します。
絵を考える時は、物語の本質を掴むこと、そして瞬発力を大切にしています。迷うとブレてしまうから。イラストレーターの安西水丸さんが生前にトークショーで、「挿絵を描くときは、文章を一回読んで描くところが一度で決まらないとプロじゃない」みたいなことをおっしゃられていて。私も挿絵の仕事をたまにやらせてもらうので、その言葉をお守りにしています。だから迷わない。
―― 大きな紙芝居の『棘』の絵はとても印象的ですよね。縁のように残した余白が効いていると思いました。
平松 余白を残すが迷ったんだけど、残したことで物語がより濃密になると思って。紙芝居の舞台まわりのようにも見えていいなと思っています。


―― これからやってみたいことや考えていることはありますか?
小島 今は、絵はみんなに渡せているけど、言葉はまだ渡せていないから、そこをこれからどうしていくといいかなって考えているところです。もう少し大きい子だけの時は子どもたちに物語を読んでもらってもいいかもしれないですよね。物語自体を子どもたちに考えてもらってもいいと思うんだけど、時間がかかりすぎるし。いろいろと試してみたいですね。
平松 来年は、作品の幅をもっと自由に広げてみたいです。抽象画だけの紙芝居もかっこいいかもしれないな。聖さんの声がなくてはならない、そんな絵を束ねてみたいです。