
“おもいつき”で始まった二人の紙芝居
小島聖さん・平松麻さんインタビュー【前編】
“おもいつき”で始まった二人の紙芝居/小島聖さん・平松麻さんインタビュー【前編】
10月に「+CEL HOME STORE」で開催した、小島聖さんと平松麻さんの2人の思いつきから始まった声と色の実験室「おもいつきの声と色」による紙芝居のワークショップと鑑賞会。今回はお二人のインタビューをお届けします。紙芝居を始めたきっかけや、子どもたちとのワークショップを終えた感想について聞きました。
photo: Norio Kidera text: Hitomi Takano edit: Naoko Yoshida
「おもいつきの声と色」
俳優の小島聖さんと画家の平松麻さん、2人の思いつきから始まった声と色の実験室。2人の交流の中で生まれるアイデアや、それぞれの日常で感じた感情やできごとを物語にして、「紙芝居」という形で不定期に発表。オリジナル紙芝居の制作から朗読までを2人で行います。同時に、紙芝居を作るワークショップも主宰。物語を聴いて、それぞれに想像して絵を描き、最後はひとつにしてその日限りの紙芝居を完成させます。ワークショップや観賞会は、各地で不定期に開催中。

―― お二人が紙芝居を始めたきっかけを教えてください。
小島聖(以下、小島) きっかけ……。なんだったかなぁ(笑)。ちょうどコロナ禍だったんですよね。お互い家も近所で。
平松麻(以下、平松) そう、私がその時小さな展覧会をやっていてコロナ禍だったから人を呼べなくて。その会場にメモ書きみたいな言葉を展示していたんです。ちょうど聖さんちに遊びに行って一緒に絵を描いていた時に、そのメモ書きを聖さんに読んでもらって、なんか良いねって携帯電話で撮ってみたのがはじまりかな。紙芝居には以前から興味があったんです。
―― もともと紙芝居に興味があったのですね。
平松 いつも旅先に紙芝居を持っていきたいなって思っていました。海外でスケッチをしていると子どもに囲まれてもみくちゃにされるから、そういうのがあれば静かになるかなと思って(笑)。私は読むのが向いているわけじゃないから実行しなかったんだけど。
―― 物語は最初からオリジナルで作られていたのですか?
小島 そうですね。最初は麻ちゃんがスケッチのように描いた絵に合わせてなんとなく喋ることもあったし、子どもが描いたものに合わせてやった時もありました。初めてちゃんと紙芝居を披露したのは、長野・松本の木工作家三谷龍二さんが運営する「10cm」というギャラリー。その時披露したのは、『めぐる木』っていう木をテーマにした物語で、ワークショップでは小さな板に絵を描きました。


―― 今回ワークショップで披露してくれた『月への旅』を選んだのはどんな思いで?
小島 『月への旅』は、子どもたちがランドセルを背負って学校へ行くみたいな。なんとなくそういうイメージだからこの場所に合うかなって。こじつけかもしれないけど(笑)。『月への旅』は、麻ちゃんが主導で生まれた物語だよね。
平松 そう。子どもの頃に、大人が生きている世界の時計を吹っ飛ばして、月も太陽も吹っ飛ばして、子どもならではの世界が夜に動いたらいいなって思っていて。そういう気持ちで書いた気がします。
―― 物語を考える時はいつもどんな風に進めていますか?二人で一緒に?
平松 どちらかが一度最後まで書いて、それをお互いにやりとりしながら赤入れをしていって、完成させます。できた物語を振り返ると、自分たちのことしかお話にしていないかもしれない。自分から離れた空想の物語を作ることは興味がないと言ったら言い過ぎだけど、やっぱり考えていると自分自身というか私とはみたいなことに行き着いちゃうから。だから、ハッピーでほっこりした物語はないですね(笑)。
小島 うん、基本ないもんね。女性のどろっとした感じとか、私ってなんだろうということとか、毒っていう感じとか。普段なかなか口に出して言えないことや思っていることも、物語でなら言える気がして。そういうことを題材にしています。ワークショップや鑑賞会では、子どもたちが置いてけぼりにならないように。なるべく主催者の方に年齢層とかを聞いて、私たちが選ぶようにしています。
ただ、たまたま最初の制作の頃からうちの子も一員のようにそばにいて、大人っぽい物語をやってもちゃんと観てるし、子どもだから子どもっぽい何かをしなきゃいけないわけじゃないし、そこは境界線はなくていいんだなとも思います。


―― この場所でワークショップはどうでしたか?
平松 さっき聖さんとも話していたんですけど、この場所で仕上がったみんなの絵がすごく明るくて。
小島 そう、色使いがすごくね。みんな幸せなんだろうなって思って。土地や場所によって、子どもたちの色使いも雰囲気も全然違うんですよ。
平松 選ぶ色も環境から受けるものもあるでしょうね。ここはランドセルがあるから明るい色が多かったのかな。子どもたちのための場所なんだってわかるから。
ワークショップは、その会場でしかできないことができるのがいいなといつも思います。ここで
ランドセルのかぶせ裏の内側に入れる絵を描くワークショップなんてしたら楽しそう。紙芝居やワークショップを通して、その場の人たちが何を受け取ってそれを広げてくださると私たちも嬉しいです。