INTERVIEW

フォトグラファーが写した、ランドセルが届いた日。

フォトグラファーが写した、
ランドセルが届いた日。

+CELのランドセルがご自宅に届いた時に、子どもたちはどんな表情をしているのでしょう。もうすぐ一年生になる娘の父であり、フォトグラファーである阿部ケンヤさんにお願いして、その姿を撮影していただきました。嬉々として箱からランドセルを取り出し、照れたようにはにかむ表情は、小学生になる喜びと少しの緊張が混ざっているよう。阿部さんの目には、どう映ったのでしょう。「ランドセルが届いた日」について聞きました。

―― ランドセルは、どうやって選んだのですか?

阿部ケンヤ(以下、阿部) 下調べは、僕がかなりしました。機能面、デザイン面どちらも気にしていたと思います。柚木(沙弥郎)さんのロゴなの!? と、色々調べていくうちに、「ああ、素敵だな」と。色に関しては、せっかく+CEL独特のカラーがあるから、キャメルやネイビーもカッコいいなと思っていたんです。親のエゴと言うか……。でも、やっぱり女の子だからなのか、迷いなしに赤を選んでいましたね。昔のランドセルのイメージに比べると、とてもキレイな赤だから、父親的にもオーケーかなと(笑)。

―― かぶせ裏の柚木さんの柄については、どんな反応でしたか?

阿部 もちろん子どもは柚木さんのことは知りません。けれど、その分、素直に受け取ることができるのか、「かわいい!」って言ってましたね。名前ではなく、良いものは伝わるんでしょう。それは日常生活でも最近すごく感じています。例えば、きちんと出汁を取ったスープは飲み干すんですね。本物は、子どもたちにまっすぐに伝わる。大人よりもずっと正直だと思います。

―― ランドセルが届いた時のことを教えてください。

阿部 最初は嬉しくて笑顔になるっていうよりも、真剣な顔をしていました。自分が子どもの頃にも、プラモデルをもらった時には、説明書を真剣に読み込んでいたけれど、あの感じと言うか。嬉しくって、真剣になる。触って素材を確認したり、匂いを嗅いだり、ランドセルの中を覗いたり、細かくチェックしていましたね。自分にとってすごく大事なものが届いたことを彼女はわかっているんだなって。鏡で似合っているかどうか確かめたり、もう終始ニコニコ。保育園でも小学校に向けての準備を始めているから、きっと本人の中でもランドセルは「小学生になるんだ」って物質的に意識するきっかけになっているんじゃないかな。

―― 父親の目線では、どんなことを感じましたか?

阿部 始まるんだな、って思いましたね。成長したなっていう気持ちもあり、同時にこれからの6年間って、すごく自分を形成していくはずで、どんな子に出会うんだろう、どんな冒険があるんだろうって、自分に照らし合わせて考えていました。
 正直、心配の方が強いかもしれません。今までは親の見える範囲で対処できていたことが、どんどん外に広がっていく。「通学路、本当に一人で歩いていけるのかな?」とか。ランドセルには反射板がついていて、ああ、きちんと子どもの安全を考えてくれているんだなって思いました。 奥さんは、娘と一緒にキャピキャピ喜んでいて、全然反応が違いましたね(笑)。

―― ランドセルが届いたタイミングで、入学した後の未来を想像したんですね?

阿部 はい。ランドセルって、すごく象徴的なアイテムだから。自分が子どもだった頃を思い返すと、6年間使って、最終的にはぺちゃんこだった記憶があるんですね。娘のランドセルを見て、こんなに最初はきれいだったのかと。自分は大事に使っていなかったなって思い返したけれど、それもまたランドセルの役割と言うか、日常の相棒として使い倒すものなんだろうなって感じています。

―― 入学式が来るまでは、きっと頭の中でいろんなことを考えてしまいますね。

阿部 本当にそうです。入学式まで、ずっと緊張しているかもしれない(笑)。まだランドセルが少し大きくて、「こんなに小さな子が一人で歩いて出掛けて、勉強して帰ってくるなんてできるのかしら」って考えてしまうから。今の時期が一番、あれこれと思いを馳せてしまうんでしょうね。きっと始まってしまえば慣れてしまうけれど、この相反するような感情を大切にしたい。
一方で、自分の両親もきっとこの感覚を味わったんだろうなと思ったりもしますね。そういう意味でも、ランドセルはすごく象徴的な存在。ずっと変わらないアイテムだから、世代を越えて、経験が巡っていく。親は、勝手にいろんな感情をランドセルにのせている気がします。

―― 今回は、ランドセルが届いた日の記録の撮影もお願いしました。やはり自分の子どもを撮る時は、普段の仕事とは違いますか?

阿部 まったく違いますね(笑)。子どもの誕生日には、毎年同じ場所で、同じ椅子に座らせて写真を撮っているんですね。その時には感情を写そうとするよりも、できるだけ写真としてきれいに残そうと必死なんです。「ちゃんと座ってて!」って、怒ったりして(笑)。でも今回は、喜んでいる姿を順を追いながら撮っていて、とても良かった。真剣だった顔が次第に笑顔になっていく。その感情の動きを撮影できたことは、とてもメモリアルだったなと思います。やっぱり、ランドセルは特別な存在なんだと、撮影をしながらもずっと思っていました。