INTERVIEW

気づかれなくていい職人の仕事。責任とやりがいについて。

気づかれなくていい職人の仕事。
責任とやりがいについて。

+CELのランドセルは、職人たちがひとつひとつミシンがけをしています。背カンと呼ばれるベルトを繋ぐ部分はしっかりと立ち上がる設計になっていて、左右それぞれが独立して動くようになっています。あるいは型崩れを防ぐため、カバン部分の側面と底面にはコの字型のプレートが入っています。それらいくつもの機能を担保するために厳選されたパーツを組み上げていく工程は、すべて手作業で行います。ランドセルは単なる工業製品ではなく、人の温もりが通った道具。そのことをよく知る職人たちに、+CELのランドセル作りについて聞きました。

―― +CEL初めての展示会で何を感じましたか?

青田:自分が作ったものをお客様が手に取っているのを見るのも、直接お話しする機会も初めてだったんです。本当に、本当に、嬉しかったです。今までで一番やりがいを感じた瞬間でした。

小幡:僕は思わず、「お兄ちゃんが作ってるんだよ」って言ってしまいました(笑)。作っていて良かったと、つくづく思いました。職人として工場で仕事をしていると、お客様の顔ってなかなかわからない。けれど、これからはお子さんたち、ご家族の顔が浮かびます。同時に職人としての責任を強く感じました。

―― 職人としての責任とは、どんな意味でしょう?

小幡:安全性はもちろんのこと、品質の確かさですね。ランドセルを作っているときには、次の工程に渡す時にはお客様だと考えるように徹底しているんですね。それが社内の方針です。でもこれからは、実際に手に取るお客様まできちんと想像できると思います。

青田:誰も見ていないかもしれないところにまで、こだわること。それが私たちの責任だと思います。例えばランドセルそれぞれのパーツを縫い合わせる時には細い糸を使いますが、全体を組み上げる時には太い糸を使うんですね。組み上げの工程によって、仕上げの印象は変わってしまいます。特に+CELは、その縫い目のピッチの幅が小さいんですね。それだけ難しいんですが、均一になるよう徹底しています。お客様は気づかなくても良いんです。むしろ、気づかれないような仕事をしたい。

―― 気づかれない仕事とは?

青田:ピッチ幅が揃っていて美しければ、お客様はそこに目が向かないと思うんです。よれていたり幅が揃っていなかったりすると、気になってしまうもの。ランドセル全体の雰囲気は、それら細かな部分が作り出しているはずです。私たち職人の気持ちは、細部に詰まっていると思います。

小幡:実際にお客様と会ってお話しした経験はすごく財産になると思っています。勝手な想像で男の子は黒が良いのかなと思っていましたが、黒や紺が似合う女の子もいて、ああもっと自由に考えて良いのだと思いました。大切なのは良いものを作ること。お客様との会話はこれからのランドセル作りに確実に反映されますし、反映していくこともまた職人の責任なのだと思います。