INTERVIEW

ものづくりの現場から。

ランドセルは、職人の手作業によって作られます。そのために、よく目を凝らして見れば、ミシンの縫い目や鋲の打ち方によって、一つ一つ違うことがわかるかもしれません。高い品質を担保した上でわずかな違いがあることは、人の温もりが伝わる個性と捉え、大切な価値だと考えています。
専用のミシン、切り出された人工皮革、選び抜かれたパーツ。工場には、良いランドセルを作るために追求されたさまざまな要素が並んでいます。それらを一つにまとめ、完成させているのが、職人たちの情熱です。彼らが何を考え、何を大切にしているのか、聞いてきました。職人の言葉は、そのまま〈+CEL〉のランドセルの本質です。

6年間、背中で子どもたちを
見守る存在として。

ランドセルにおいてもっとも大切な要素は、6年間、支障なく使うことのできる丈夫さだと考えます。傷みやすい取り出し口は変形を防ぐためにワイヤーで補強したり、どうしても擦れてしまうコーナーなどは、生地を二重に巻いたりしています。また、型崩れのしやすいマチ部分には、コの字型の芯材を入れて、形状を保持し、圧力を逃すような構造になっています。これは単に丈夫さのためだけではなく、子どもたちを守る役割のため。ランドセルは、転んだ時に後頭部を打たないようクッションの代わりになる必要があるんです。丈夫さと強度は何よりも大切なんです。

子どもたちに寄り添うための、
ディテール。

丈夫さと同じくらい大切にしているのが、子どもたちに寄り添う構造です。素材を吟味して重量を軽くするのは当然のこととして、肩ベルトを少し立ち上げることで背負いやすくしたり、背負った際にもっとも軽く感じる垂直の状態を保つ背面クッションを採用したりしています。肩ベルトについた長さを調節する尾錠にはひねりを加えて、金具が体に当たって痛くならないような工夫をしています。低学年や左利きの子どもたちにも使いやすいよう、ランドセルを閉じる錠前は、左右どちらに回しても開くことができます。細かな試行錯誤の積み重ねが、このランドセルです。

機能と佇まいを両立させる技術。

〈+CEL〉のランドセルでは、機能だけでなく、美しさも追求しています。特に見ていただきたいのが、細かなステッチです。わずかな違いですが、一般的なランドセルよりもピッチを短くすることで、まったく印象が違います。補強のために二度ミシンがけをする箇所があるのですが、どちらも同じ穴に糸を通し、すっきりと仕上げてあります。それら仕上げ部分の縫製は、ランドセルの形となった状態でミシンをかけていくので、とても難しい工程で、縫うことのできる職人は、ほんの数名しかいません。
美しさも大事な機能だと、私たちは考えています。

経験があるから、
新しいチャレンジができる。

私たちは、75年以上ランドセルを作ってきた企業の職人です。+CELには、それまで培ってきた技術のすべてが詰め込まれています。過去のデータや経験を活かしながら、新たな型紙を起こし、生地を裁断し、ミシンで縫製していく。その多くの部分は手作業です。創業の地である兵庫県たつの市で、すべての工程を行なっています。ランドセルは日本独自の文化であり、これほど長きに渡って背負い続けられてきた鞄は他にありません。これからも愛され続けていくために必要な鞄は、どんなものなのか。+CELのランドセルは、我々、職人にとっても新しい試みです。